育毛剤・発毛剤・処方薬の違い 医薬品と医薬部外品、化粧品の区分で見る
育毛剤、発毛剤、処方薬の違いは、法律上の区分の違いです。医薬品医療機器等法は、製品を「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」に分けています。区分によって、表示できる効能の範囲と、買える場所が変わります。「育毛剤」「発毛剤」という呼び名そのものは、今回確認した法律の定義規定(第2条)にはありません。
この記事は、厚生労働省とPMDAの資料で確認できた範囲だけを書きます。どの製品が合うかは、医師や薬剤師に相談してください。
法律上の3つの区分
医薬品医療機器等法の第2条は、3つの区分を定義しています。次の表は、条文の内容を要約して並べたものです。
| 区分 | 定義の要点(第2条) |
|---|---|
| 医薬品 | 人または動物の疾病の診断、治療、予防に使うことが目的の物。身体の構造や機能に影響を及ぼすことが目的の物 |
| 医薬部外品 | 決められた目的のために使う物で、人体に対する作用が緩和なもの。目的の1つに「脱毛の防止、育毛又は除毛」がある |
| 化粧品 | 身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚や毛髪を健やかに保つために、塗るなどの方法で使う物で、人体に対する作用が緩和なもの |
医薬部外品と化粧品には、どちらも「人体に対する作用が緩和」という条件が付いています。医薬品にはこの条件がありません。
「育毛剤」は医薬部外品の区分にある
医薬部外品の目的の1つに「脱毛の防止、育毛又は除毛」があります。厚生労働省が登録販売者試験のために作成した「試験問題の作成に関する手引き」(平成19年8月)には、医薬部外品の効能効果の範囲の表があり、「育毛剤(養毛剤)」の行があります。
- 使用目的:脱毛の防止及び育毛を目的とする外用剤
- 効能・効果の範囲:育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛
手引きは、これを医薬部外品の育毛剤(養毛剤)の効能・効果の範囲として示しています。範囲には「発毛促進」「毛生促進」という言葉が入っています。
なお、この手引きは平成19年の文書です。現在の範囲は、厚生労働省の「化粧品・医薬部外品等ホームページ」で確認してください。
化粧品が表示できる効能
化粧品が表示できる効能は、厚生労働省の通知「化粧品の効能の範囲の改正について」(薬食発0721第1号、平成23年7月21日)の別表に並んでいます。頭皮と毛髪に関する項目は、(1)から(16)です。
- 頭皮、毛髪を清浄にする
- 頭皮、毛髪をすこやかに保つ
- 毛髪にはり、こしを与える
- 頭皮、毛髪にうるおいを与える
- フケ、カユミを抑える
- 裂毛、切毛、枝毛を防ぐ
上は16項目のうちの一部です。この16項目の中に、「育毛」「発毛」「脱毛の予防」という言葉はありません。
一般用医薬品の例(ミノキシジル外用)
薬局やドラッグストアで買える医薬品を、一般用医薬品といいます。PMDAに掲載されているミノキシジル外用の一般用医薬品(1%、女性用)の添付文書を例にすると、表示は次のとおりです。
- リスク区分:第1類医薬品
- 効能・効果:「壮年性脱毛症における発毛,育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防」
効能・効果に「発毛」という言葉が入っています。これは1つの製品の例で、男性用の製品や濃度が違う製品の添付文書は、今回は確認していません。
日本皮膚科学会のガイドライン2017年版は、ミノキシジル外用の推奨度をA(行うよう強く勧める)とし、濃度を男性5%、女性1%としています。
医薬品の中の区分(処方薬と市販薬)
医薬品は、入手の方法でさらに分かれます。厚生労働省と日本薬剤師会の冊子「薬の知識」(平成30年10月)は、次のように説明しています。
次の表は、冊子の説明を区分ごとに並べたものです。
| 区分 | 冊子の説明 |
|---|---|
| 医療用医薬品 | 「医療機関で医師・歯科医師がその人の病気、症状、体質、年齢などを考えて処方する薬」 |
| 要指導医薬品 | 医療用からOTC医薬品に変更されてからの期間が比較的短いものや、劇薬が該当する。「薬剤師の説明を受けなければ購入できません」 |
| 一般用医薬品 | 「リスクに応じて、第1類~第3類に分類されます」。購入や相談には、薬剤師や登録販売者が対応する |
OTC医薬品は、処方箋なしで薬局などで買える薬のことです。
クリニックの処方薬は、医療用医薬品に当たります。フィナステリド内服は、PMDAに医療用医薬品の添付文書が掲載されています。厚生労働省の個人輸入の案内でも、処方箋薬は別の数量区分になっています。
3つを並べると
次の表は、一般に「育毛剤」「発毛剤」「処方薬」と呼ばれるものを、今回確認できた範囲で区分と並べたものです。
| 呼び名 | 確認できた区分 | 買える場所 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 育毛剤(養毛剤) | 医薬部外品に「育毛剤(養毛剤)」の区分がある | 今回の資料では確認していません | 医薬品医療機器等法 第2条、厚生労働省の手引き |
| 発毛剤 | 法律の定義規定に、この呼び名の区分はない。効能に「発毛」を含む一般用医薬品(ミノキシジル外用、第1類医薬品)の例がある | 薬局など。第1類から第3類は薬剤師や登録販売者が対応 | PMDA掲載の添付文書、冊子「薬の知識」 |
| 処方薬 | 医療用医薬品 | 医師の診察を受けて処方される | 冊子「薬の知識」、PMDA掲載の添付文書 |
市販の製品がどの区分かは、パッケージの表示(「医薬部外品」「第1類医薬品」など)で確認できます。
学会ガイドラインとの関係
学会ガイドラインの推奨度は、成分と使い方ごとに付いています。製品の区分(医薬品か医薬部外品か)ごとに付いているのではありません。
- フィナステリド内服、デュタステリド内服:推奨度A
- ミノキシジル外用:推奨度A
- アデノシン外用:推奨度B
- カルプロニウム塩化物外用、t-フラバノン外用、サイトプリン・ペンタデカン外用、ケトコナゾール外用:推奨度C1
アデノシンやt-フラバノンなどを配合した製品がどの区分で販売されているかは、今回の資料では確認していません。全項目はガイドラインの推奨度一覧にあります。クリニックが処方する成分はAGA診療で処方される薬の種類にまとめています。
表示で確かめられること
製品やサービスを見るとき、次の順で確かめられます。
- パッケージや公式サイトで、区分(医薬品、医薬部外品、化粧品)を見る
- 医薬品なら、医療用か一般用か、リスク区分は何かを見る
- 有効成分の名前と濃度を見る
- クリニックの処方薬なら、国内承認薬か海外製かを見る
海外製の薬の扱いは国内承認薬と海外製の違いに、海外から自分で買う場合の注意は薬の個人輸入に書いています。
よくある質問
Q. 育毛剤と発毛剤は法律で決まった言葉ですか
今回確認した医薬品医療機器等法の定義規定(第2条)にあるのは、医薬品、医薬部外品、化粧品の3つです。医薬部外品の目的の1つに「脱毛の防止、育毛又は除毛」があり、厚生労働省の手引きに「育毛剤(養毛剤)」の区分があります。
Q. 医薬部外品の育毛剤は「発毛」と表示できますか
厚生労働省の手引き(平成19年)にある育毛剤(養毛剤)の効能・効果の範囲は、育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛です。
Q. 市販のミノキシジル外用は誰から買いますか
PMDAで確認した1製品の例では、第1類医薬品です。第1類医薬品の販売方法の詳しいルールは、今回は確認していません。薬局で薬剤師に聞いてください。
Q. 化粧品のシャンプーや頭皮用のローションは、育毛と表示できますか
化粧品の効能の範囲(頭皮・毛髪の16項目)に、「育毛」「発毛」という言葉はありません。
Q. 処方薬は薬局で買えますか
冊子「薬の知識」は、医療用医薬品を、医師が処方する薬と説明しています。入手には医師の診察が必要です。
この記事の要点
- 法律上の区分は、医薬品、医薬部外品、化粧品の3つ
- 「育毛剤(養毛剤)」は医薬部外品の区分にあり、表示できる効能の範囲が決まっている
- 効能に「発毛」を含む一般用医薬品の例として、ミノキシジル外用(第1類医薬品)がある
- クリニックの処方薬は医療用医薬品で、医師の診察を受けて処方される
- 区分は、パッケージや公式サイトの表示で確かめられる